メタクリロイルオキシ安息香酸を含む常温重合レジンの歯質接着性
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概要
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メタクリロイルオキシ安息香酸(MBA)の異性体3種を合成し, MBAを含む常温重合レジンの歯質に対する接着強さを測定した.あわせて, MMA溶液中からの歯質粉末に対する吸着測定, および走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い, MBAの歯質接着性について考察した.o-およびm-異性体である2-MBAおよび3-MBAでは, TBB-Oを重合開始剤とするMMAレジンに3〜5wt%添加した場合に10%クエン酸-3%FeCl_3処理歯質に対して14〜15MPaの最も大きな接着強さを示した.p-異性体である4-MBAは室温においてMMAに対する溶解性が低いものの, 1wt%の添加で12.5〜14.5MPaの接着強さを示した.MBAの接着効果は, 過酸化ベンゾイル-芳香族第3アミン系, あるいはこれに芳香族スルフィン酸を加えた重合開始剤系を使用した場合も, また無処理歯質に対しても認められた.いずれのMBAもレジンの歯質接着性を向上させるが, 他の歯科用モノマーに対する溶解性, あるいは長期水中浸漬および熱サイクル試験による接着耐久性などから, 3種のMBA異性体の中では3-MBAが実用的に最も好ましいモノマーであると思われる.処理象牙質に対する接着において, 樹脂含浸象牙質層の形成と接着性が密接に関係していることがSEM観察から示唆された.MBAが接着剤レジンモノマーの脱灰象牙質層への含浸を促進していることも確認された.MBAのMMA溶液中からの歯質に対する吸着においては, MBAが優先的に歯質に吸着することが示された.MBAはカルボキシル基で歯質に吸着し, フェニル基を歯質から遠ざけるように配向すると推定された.さらに, 吸着等温線から吸着したMBA層にはMMAの競争吸着が起こっていることが示唆された.以上の結果から, MBAの歯質への吸着が行われることでレジンが歯質面により完全な形で密着すること, あるいは処理象牙質に対しては脱灰象牙質層へのモノマー浸透を助長することによって, MBAの接着促進効果が発現するものと思われる.
- 日本歯科理工学会の論文
- 1988-03-25
著者
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