X線による高溶卑金属合金鋳造体の非破壊検査
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概要
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コバルト・クロム系およびニッケル・クロム系合金は耐食性にすぐれ機械的強度も大きく軽量で,しかも生体組織へのなじみも良好である。さらに精密鋳造成形法についてもほぼ確立され,比較的精度の良い鋳造体が得られるようになってきた。最近では鋳造床のみならずクラウン-ブリッジ,メタルボンドポーセレンさらにインプラント用として広く活用されようとしている。しかしこの種の合金には鋳造欠陥が多発するという大きな難点がある。とくに内部鋳造欠陥の発生は鋳造成形物の機械的性質や耐食性を著しく低下させ生物学的にも種々の問題を包含している。そこで鋳造体内部の欠陥の発生機構を解析し,欠陥防止法を究明するために歯科鋳造体専用のX線装置を開発し,その性能を調べるとともにいくつかの実験を行ってみた。すなわち,コバルト・クロム合金(Bionium)およびニッケル・クロム合金(Wiron)で鋳造成形された階段状のtest pieceを使用した。test pieceの厚径は0.35mmから4.55mmまでを0.35mmごとに13段階にしたものである。なお,臨床実験例としてコバルト・クロム合金による鋳造床とクラウン,骨膜下インプラントの下部構造体などの内部欠陥を観察した。 その結果,歯科鋳造体専用X線装置(Bio-X)を用いることによってきわめて鮮明なX線像が得られることが分かった。本法によればブローホールや樹枝状鋳巣のような微細な欠陥まで観察が可能で,とくに管電圧50, 60および70KVpで90秒間の曝写条件でコバルト・クロム系およびニッケル・クロム系合金鋳造体内部のほとんどの欠陥が観察された。 以上のことから,X線による金属鋳造体の非破壊検査は臨床上非常に有用なものであることが理解できた。とくに鋳造性能のよくない高溶卑金属金鋳造体については臨床応用以前における必須の検査法として採用すべきであろう。
- 日本歯科理工学会の論文
- 1984-06-25
著者
-
川原 春幸
臨床器材研究所
-
栄 弘毅
大阪歯科大学歯科理工学教室
-
石崎 順啓
大歯大・理工
-
川原 春幸
大阪歯科大学歯科理工学教室
-
石崎 順啓
大阪歯科大学歯科理工学教室
-
川原 春幸
大阪歯科大学
-
前田 孝俊
大阪歯科大学歯科理工学教室
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