古イタリア語における動詞の前方という位置
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
はじめに. : 現代イタリア語(現伊語)には、文中のある要素を、その本来の位置よりも前(すなわち左)の方に置く文法上の手だてがいくつかある。このような構文は、基本の語順を大幅にゆがめ、無標から有標に変えるという点で、何らかの語用論的な意図があって用いられるものである。一方、13・14世紀トスカーナ地方のテクストによる古イタリア語(古伊語)にも、これと類似の形式をもつ構文が見られる。本稿では、古伊語のこのような構文が、語用論という角度から見て、今日の類似の構文とどれくらいの共通性をもっていたのか、を考察してゆきたい。考察に先立って、まず、現伊語は、ある要素を文の左方に移動させるのに、いかなる手だてをもつのか(第1節)、そして、古伊語では、いかなる統語上の機構が、主語以外の要素を動詞の前方に置くことを許していたのか(第2節)を、それぞれ概観しておく。しかるのちに、古伊語に焦点を絞りながら、動詞の前の要素がもっていた語用論的特徴を検討してゆく。その際、まず、動詞の前の要素が接後代名詞の繰り返しを残さない構文をとりあげ、このような構文が、それに匹敵する現伊語の構文と語用論上いかなる共通性を備えていたのか、を考察し(第3節)、次いで、古伊語で接語代名詞の繰り返しを残す構文について、それを残さない構文との関連を軸に、同様の考察を試みることにする(第4節)。
- イタリア学会の論文
- 1994-10-20
著者
関連論文
- イタリア語とフィレンツェ方言の主語代名詞 : 3人称egli, ellaの歴史的展望
- イタリア語とルーマニア語の語順について : 語用論的視点からその無標性を探る
- ことばというパスポート(9)ルーマニア語
- イタリア語における無標の語順について
- 語順の自由度--イタリア語の場合 (特集 語順の文法--どんな自由がどこまで許されるか)
- 開催校側から見た年次大会 (文集:会員が語る50年の歩み)
- 古イタリア語における動詞の前方という位置
- エミネスクの「夕べの丘に(Sara pe deal)」
- 談話における左方転位のイタリア文
- ヤーコブソンによる言語の詩的機能の位置づけとダンテ『神曲』地獄篇第5歌の分析