ヴァルデス・レアルの聖フランチェスコ : 芸術と聖フランチェスコ(三)
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概要
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《死の画家》と言われ、世の無常と虚栄の空しさを絵画上に表出した十七世紀スペイン、セビリヤの画家、ヴァルデス・レアルは、その高い宗教性と時には通俗に墮ちんとするばかりの人間表現の美しさにおいて極めて特異な存在である。「彼は常にムリリヨのライバルとしての位置を主張しようと努めた。このことが彼を不条理や誇張に駆り立てた。彼の宗教作品の多くは明かにより成功したムリリヨの模倣である。」あるいは、「この芸術家は、ムリリヨの作品のもつ清朗と素晴しい均衡、又、芸術の使命に対する固い信仰の点においては、Conceptionの画家の栄誉を翳すことは出来なかった。」との評価に見られるごとく、その評価はムリリヨに比して決し高いものではなかった。又、同じセビリヤの画家スルバランに比しても、一般に知られること遙かに少なく、研究書を本国のスペイン語文献の他は皆無と言ってよかった。しかし、近年、"Hipanic Society of America"のトレピエーが小冊ながら二本の研究書を上梓し、ヴァルデス・レアルの芸術性格を再認識せしめ、バロックの時代精神に最も深く浸透された画家として、その芸術が高く評価されるようになった。幸い、此の二著を閲読し得て、トレピエーの高説とビアルデス・レアルの芸術に接し得たのであるが、"Ecstasy of Saint Ftancis of Assisi"(New York, Durlacher Brothers)があることを知り、図版を見ることが出来、大変嬉しく思ったのである。ヴァルデス・レアルの聖フランチェスコ画像は此の一作品しか知られないが、図像的に極めて特異なものである。天使や聖フランチェスコの顔貌の異様な美しさと相倣って注目に値する作品であり、以下、図版を手頼りに当作品を紹介して見た。
- 1962-12-30
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