マンガン団塊の年輪構造に沿った元素分布と環境変動に対する考察
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概要
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マンガンと鉄の酸化物であるマンガン団塊は, その成長環境における環境変化によって, 化学組成が異なる年輪構造を形成することが知られている.ハワイ南東沖海底にて採取された試料について, その化学組成の特徴を把握すること, 環境を反映する因子を抽出することを目的として実験を行った.まず, 走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて年輪構造に沿った元素のマッピングを行った結果, 年輪構造に沿って, パイライトが濃縮していると考えられる微小な層を見つけた.更に, より詳細な化学組成を分析するため, また, SEM-EDXの結果の再現性を確認するため, 別の試料を年輪構造に沿って削り分け, 溶解し, 主元素, 微量元素についてそれぞれ誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES), 誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて定量分析を行った.切断し分析した面は, ほぼ楕円形となっているが, その短径の方向に中心から直径の1/3から1/2にかけての範囲で, 元素によって段階的な分布の変化が見られた.また, SEM-EDXで硫黄が濃縮していた層と相対的に同じような位置(中心から3/4)で多くの元素の分布に急激な変化が見られた.以上のことから, マンガン団塊の生成過程で, 2回の異なる環境変動があったと考えられる.試料採取地点がハワイ沖であることから, ホットスポットなどの火山活動による何らかの影響を受けたと考えられる.元素によって段階的な分布の変化が見られた部分については, 火山から流出した溶岩からの元素の溶出, 多くの元素について急激な分布の変化が見られた部分については, 火山性のガスによる影響が考えられる.
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 2005-10-05
著者
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