ろ紙法による大気中微量フェノール,クレゾール類の定量法
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
大気中微量フェノール,クレゾール類の定量法を検討した.試料空気の捕集は10%水酸化ナトリウムと30%グリセリン混合試薬をしみ込ませたガラス繊維ろ紙を通して吸引し,大気中フェノール,クレゾール類を捕集した.このろ紙によるフェノール,クレゾール類の捕集率は,捕集面積17.3cm^2を有するろ紙を用いた場合,毎分51の採気流量では100%の効率でフェノール,クレゾール類が捕集された.次に,採気の終わった試料ろ紙は共せん付き三角フラスコ(SPCすり合わせ)に入れ,エチルエーテル,リン酸を5:1の割合で添加し(添加量は試料量によって異なるが,採気面積17.3cm^2のろ紙ではエーテル10mlに対しリン酸2ml)エーテル中でリン酸によりフェノール,クレゾール類をろ紙より脱離させ,エーテル層に移行した後分離試験管にろ過して入れ,静置後リン酸を除去し,エーテル抽出液を分取してフレームイオン化検出器(FID)付きガスクロマトグラフに導入した.この抽出操作によるろ紙からのフェノール,クレゾール類の回収率は被検成分のろ紙付着量に関係なくほぼ100%の効率で回収され,定量値の変動係数は7%以下であった.又抽出液を濃縮したい場合には濃縮管内に抽出液を入れ,窒素気流10ml/minの流量で毛細管を介して送り,20倍までエチルエーテルを蒸発濃縮したところ,フェノール,クレゾール類の回収率は約96%以上と定量的に濃縮可能であった.本法による検出限界は採気面積500cm^2のアルカリ-グリセリンろ紙を用い120 l/minの流量で試料空気を5分間採気した場合,フェノール3.3ppb,クレゾール類では(2.7〜3.6)ppbが定量下限であり,臭覚いき値前後の濃度においては十分定量可能であった.又,本法は他のガスの妨害の程度も少なく,しかも試料ろ紙を長時間保存してもろ紙中の被検成分の損失は認められなかった.更に本法を鋳物製造工場からのフェノール,クレゾール類を悪臭物質としての測定に応用したところ,準備,運搬,保存の容易,採気操作の簡便などの利点も実証された,
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 1979-11-05
著者
関連論文
- Tenax GC捕集剤における有機化合物類の破過容量
- イオンクロマトグラフィーによる環境大気中微量アンモニア及び低級アミン類の定量
- 大気中微量臭化メチル, 臭化エチルの低温凝縮法を用いたガスクロマトグラフ分析
- バックグラウンド濃度における大気中水銀のガス-粒子分配
- 妙高山南地獄谷の噴気活動に伴って放出される水銀とその影響
- ろ紙法による大気中微量フェノール,クレゾール類の定量法
- ろ紙法による大気中微量アンモニアの定量法