口紅の法科学的分析のためのパージアンドトラップガスクロマトグラフィーの検討
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概要
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パージアンドトラップ(P&T)法は, 環境科学分野や食品中の香気性物質などの揮発性成分の分析に用いられている.今回, 蒸気圧が高い揮発性成分についてP&T法の分析条件の検討を行い, これを踏まえて, P&T法を犯罪現場で証拠物件として散見される口紅の分析へ応用した.バ-ジガスを用いて吸着剤にトラップ・濃縮し, キューリーポイント加熱により熱脱着させるタイプのものをガスクロマトグラフに装着した装置を用いた.最適条件は5点の標準物質を用い, その各々のガスクロマトグラム上のピーク面積の変化を測定して求めた.その結果, 熱脱着温度(サンプル加熱温度)は150℃, 熱脱着時間(サンプル加熱時間)は10分, トラップ温度(吸着剤冷却温度)は-40℃, パージガス流量は20ml/minであった.更に, 標準物質を用いて相対標準偏差を求めたところ, いずれも3%以内の値を示した.本法を口紅の分析に適用した結果, わずか0.1mgの試料でも, 抽出・誘導体化などの前処理操作を行わずに迅速な分析が可能であった.従って, 極微量の証拠物件を基にして, 製品間の異同識別やメーカーの特定を行い, 短時間のうちに結果を提出する必要のある法科学鑑定において本法は有用と考えられる.
- 1997-09-05
著者
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斉藤 修二
警察庁刑事局鑑識課鑑識資料センター
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大栗 直毅
日本分析工業株式会社
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大栗 直毅
日本分析工業
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江原 靖
埼玉県警察本部刑事部科学捜査研究所
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丸茂 義輝
警察庁刑事局鑑識課鑑識資料センター
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