多エージェントにおける共有信念の構造
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概要
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複数のエージェントが同時に存在し, タスクを遂行する場合を想定する. この環境において起こる問題として, あるエージェントが他のエージェントの活動を妨害したり (confliction), 活動が無限に引き伸ばされている場合 (dead lock) がありうる. このような問題を解決するために, 折衝 (negotiation) の機能を持たせる事が一般的であるが, より簡単な方法として, エージェントが因習 (社会規則 : social law) に従うことによって上の様な問題を negotiation の機能を持たせる事なしに解決することが提案されている. 一般に合理的なエージェントが信念に基づいて行動する環境下において, 社会規則が成立するためには, 単に規則を知っているだけではなく, 他のエージェントが社会規則を知っているか否かに関する知識を必要とする. 二人の人間がある共有知識を持つということは, 単に二人ともその知識を知っているばかりでなく, お互いに相手が「その知識を知っていることを知っている」こと、更に「知っていることを知っていることを知っていること」...等, 知識の所有に関する無限の付帯的な知識を共有していることを意味する. このように, 共有知識は多エージェントにおける間題解決の基本的な要素であるにも関わらず, その定義において無限操作を含んでいる為, 取り扱いが難しい. 本研究では, 社会規則を共有知識ではなく各エージェントの自己信念として定義する. 全てのエージェントが自己認識論理に基づき, 合理的かつ内省的であり, かつ 「他のエージェントが社会規則を知らないならその事を自分は知っているはずだ」という信念を持っているモデルを考察する. 例えば, エージェント a, bと社会規則 Slが与えられているとする. aが, 「私は, 社会規則slを知っており, もし, bがslを知らないのなら, その事を自分は知っているずだ.」という信念のみをaの信念集合に持っていたとする. aは, 自己認識論理に基づいて, 「bは, slを知っている.」と結論を出す. もとより, bがslを知っているか否かは断定できない. もし, bがslを知らない場合はどこかで, confliction が起こり, aは, bがslを知らない事を認識することになる. 従って, 非単調推論に基づき共有信念がしだいに形成される。しかし, 全てのエージェントが社会規則を知っている場合, 安全 (confliction free) な集団行動を行なうことができる. 結果として共有知識より弱い形で共有されている形態においても安全 (confliction free) な集団行動が行えることを示す.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1997-03-12
著者
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