3次元アニメーションデータベースシステムMOVEの基本設計とその評価
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概要
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3次元コンピュータアニメーションの基本問題は,アニメーションの登場物に望み通りの動きをさせることである.動きの記述法としては,簡潔な記述で自然な動きが指定できるものが望ましい.この観点から,従来,さまざまな研究が行なわれてきた.代表的な手法は,現実世界の物理法則を計算機内でシミュレートして,アニメーションの登場物の動きを求めるものである.登場物の状態変数を支配する何らかの運動法則(としばしば状態変数の初期値)を指定しておけば,物理的に正しくて,現実感を持った自然な動きが,計算機により自動的に計算できるという特徴がある.物理法則シミュレーションによるアニメーションの代表例が,力学アニメーションである.図1に示した力学振り子は,力学アニメーションの典型的な応用例である.図1の例は簡単なものだが,モーター,バネ,摩擦抵抗などの要素を加えることで,人体,ロボット,各種の機械部品などの幅広い分野への応用が期待されている.図1では.振り子の各部品は,ニュートンの運動法則,作用反作用の法則,エネルギー保存の法則という力学法則に従って運動している.これらの法則は状態変数(位置,速度,主軸の向き)の微分形になるので,これら状態変数の初期値と,外力(この場合,重力)とから,物体の運動が定まることになる.初期値と外力とを指定する方法の欠点は,最終的に物体がどのような動きをするのかを予想するのが困難だということである.従って,思い通りの動きをさせるのが難しい.このための有効な解決法は,物体の運動について何らかの拘束を指定できるようにすることである.図1で言えば,天井は静止しており,天井と振り子は,常に接点で接しながら回転している.拘束の指定により,最終的な動きの指定が容易になる.拘束を利用した力学アニメーションの概念図を図2に示す.ここで,物体が拘束を満たすことを保証しているのが,物体間の拘束力の存在である.拘束力は,拘束の種類と,物体の状態変数の値とから求めることができる.拘束を利用したアニメーションシステムでは,次のような条件が考えられよう.i)物体の構造について,前もって制限を加えるのは望ましくない.ii)ある物体について,時間の経過による拘束の変動や,複数の種類の拘束を指定を可能にする.iii)物体の運動を指定するのに十分な量の拘束が指定されたかどうかを判定する仕組みがあるとよい.iv)システム準備の拘束処理ルーチンの他に,利用者が新しい種類の拘束を簡単に実装できるようにする.すでに,我々は,物体の拘束から拘束力を求める方式について,オブジェクト指向の観点から考察を行なった.今回は,上記の4条件を念頭にした,MOVEのアニメーションモデルを報告する.我々は,(1)を満足するために,まず,一般的な運動方程式の立式を行うことにした.次に(2),(3)の条件のため,拘束を表す方程式を,一般的な運動方程式とは独立に立式した.物体の拘束力を求めるには,運動方程式と,拘束式とを連立させれば良い.(4)のためには,オブジェクト指向の概念を利用することにした.
- 社団法人情報処理学会の論文
- 1992-09-28
著者
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