ハイパーカラム構造の錯視現象における役割
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概要
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生体の脳の大脳皮質の第一次視覚野では,網膜の局所的な部分(受容野)に入力された像のエッジとその方向性を検出する等の低次の特徴抽出が行われる.その構造を図1に示す.太線の部分はハイパーカラムと呼ばれ,同方向のエッジを認識する細胞が集合し,柱(カラム)状を形成する.さらに,類似した方向のエッジを認識するカラムが隣接して存在するという特異な構造を持つ.[figure]このハイパーカラム構造をモデル化し,生体の脳と類似させ,単にエッジ検出の機能しか持たないものを考えると,通常生体が無意識に行う錯視現象におけるエッジ検出ができない.その例として図2の"カニッツァの三角形"が挙げられる.これは,客観的に見れば3つの黒い扇形と3つの角で構成されているが,実際(主観的)には3つの黒い円と直線で構成される三角形の上に白い三角形が存在するように知覚されてしまう.この白い三角形」を構成」する輪郭を心理学では"主観的輪郭"と呼ぶ.そこで本研究では,この"主観的輪郭"が認識できるハイパカラム構造神経回路網モデルを構築し,その錯視現象における役割を考える.またこのモデルより,"カニッツァの三角形"の"主観的輪郭"が認識可能となる.本稿ではそのモデルの概要を述べる.
- 1993-09-27