オブジェクトの『所有者』問題とC++による実装例
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概要
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近年、オブジェクト指向データベース(OODB)が注目を集めてきた。OODBは従来の関係型データベース(RDB)に比べ、データベース中の複雑な構造を持ったデータを、プログラム中で直接操作できるという特徴を持っている。具体的にはOODBでは、オブジェクト単位でデータをアクセスすることができる。本稿ではこうしたOODBシステムでのアクセス管理の問題をとりあげる。ファイルシステム、RDB、OODBについてのアクセス管理機構を表にまとめると、表1のようになる。すなわち、従来のファイルシステムでは、複雑な構造を持ったデータを直接扱うことはできず、ユーザが操作する対象も、OSがアクセス管理を行なう対象も、単純な構造からなるファイルが単位である。RDBシステムでは、データは関係という単純な表の形で表現される。ユーザは関係の中のダブル単位でデータを操作することができ、またアクセス管理も、VIEWを使用すれば、ダブル(レコード)単位で行なうことが可能である。OODBシステムでは、オブジェクト、すなわち複雑な構造を持ったデータを、そのままデータベースの中に蓄積することができる。しかしながらOODBシステムが提供するアクセス管理は、データベース単位であり、オブジェクト単位でのアクセス管理を行なう機構は、現段階では提供されていない。オブジェクト指向プログラミングでは、意味のあるまとまりをオブジェクトにマッピングすることが多い。これを受けて、近年のOODB技術や、ネットワーク環境での分散オブジェクト技術は、ユーザがデータベースやネットワークなどを意識することなく、オブジェクト単位での操作を可能にする方向にむかっている。こうした背景を考えると、アクセス管理に関しても、オブジェクト単位で自然に記述できることが望ましい。しかしながら現在のOODBシステムでは、こうした管理機構が提供されているものはない。本稿では、オブジェクトに「所有者」という概念を持ち込むときに生じる問題を扱う。こうした問題は、後で示すように、一般にオブジェクトに新たな属性を導入し、その属性に対して意味のある操作を定義しようとするときなどに、典型的に生じる問題である。ここではこうした問題をオブジェクトの所有者問題と呼び、これについて論じる。
- 社団法人情報処理学会の論文
- 1993-03-01
著者
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柴山 茂樹
キヤノン(株)情報システム研究所
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黒澤 貴弘
キヤノン(株)CMプロジェクト
-
吉本 雅彦
キヤノン(株)CMプロジェクト
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黒澤 貴弘
キャノン(株)情報メディア研究所
-
吉本 雅彦
キャノン(株)情報メディア研究所
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上原 隆平
キヤノン(株)情報システム研究所
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