法的推論システムTRIALの開発
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概要
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近年、人工知能の分野で、法的推論の研究が活発になってきている。そこでは、事案(現実の事件)に法令が適用され、判決が導かれる過程の推論をコンピュータ上で模倣しようという試みがなされている。この際、法令は演繹ルールとして表現することができるが、事案内の事実が、法令中の概念(例えば、「業務」、「殺人」など)に該当するか否かは法令の範囲内のみでは決定できず、過去の類似の判例で行なわれた解釈を判例ルールとして表現し、事案に適用するということが一般的に行なわれている。しかし、これには次のような問題がある。(1)事案が的確に知識表現されているとは限らない。事案の事実認定の段階では、主観の介在や見落としがありえるし、データ作成の段階で、事案を判例と不整合がないように(すなわち、常に同一内容を同一表現で)表現することは容易でない。(2)判例ルールの条件は必ずしも全て満足される必要はなく、事案によっては、ある条件が成り立たなくても他の条件が成り立っていれば、その帰結部は導かれるのが妥当という場合がある。我々が開発した法的推論システムTRIALでは、ユーザーの問合せに対し、「こういった事実が存在するならば、あるいは判例ルールのこういった条件が満足されるならば、こういった解が導かれる」といった仮定付き解を出力することにより、これらの問題に対処した。TRIALはICOT(財)新世代コンピュータ技術開発機構)で開発したQuixote (演繹オブジェクト指向データベースの枠組みに基づく知識管理システム)上のプロトシステムである。
- 1993-03-01
著者
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横田 一正
(財)新世代コンピュータ技術開発機構
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柴崎 真人
(株) 日立製作所システム開発研究所
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近藤 秀文
(株) 日立製作所システム開発研究所
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山本 展一郎
(株) 日立製作所ソフトウェア開発本部
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