3.ビタミンDレセプターによる転写抑制機能(脂溶性ビタミン総合研究委員会 第306回会議研究発表要旨)
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概要
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ステロイドホルモンをはじめとした甲状腺ホルモンおよびビタミンA, D, エイコサノイド等の低分子量脂溶性生理活性物質は, リガンドとして各々固有の核内レセプターを介して生理作用を発揮する. これら核内レセプターリガンドの多くは, 骨代謝において生理的に極めて重要な役割を果たしていることがわかっている. 核内レセプターは, リガンド誘導性転写制御因子として機能するが, このリガンド依存的転写制御を, 基本転写装置と共におこなう際, レセプターヘリガンド結合依存的に相互作用する核内複合体群が見出されている. 我々は, VDR機能をin vitro系で解析し, その転写抑制の分子機構を腎臓に局在する1α-水酸化酵素遺伝子を用い解析し(Takeyama K et al. (1997)Science277, 827), この遺伝子プロモーター上に負のVDRE(1α-nVDRE)配列が存在し(Murayama A et al(1998)BBRC249, 11), 更にこの配列に結合する特異因子VDIRの同定にも成功した(Murayama A et al. (2004)EMBO J23, 1598). 一方, VDR転写共役因子複合体を解析する過程で, 新規クロマチン構造修飾複合体WINACの同定に成功している(Kitagawa et al. (2003)Cell 113, 905). 現在WINACとVDIR間での機能的相互作用を検討している. 我々の知見をもとに, ビタミンDレセプターの遺伝子発現抑制の重要性について概観したい. 〔論議〕<山内委員>1)WINACは, ビタミンDレセプターを介した転写制御全てに関与しているということか. 2)WINACが, どのサブクラスの複合体なのか. 他の複合体とのコンタミネーションの可能性は否定できないか. <加藤委員>1)正, 負の制御両方に関与すると考えられますが, すべての標的遺伝子プロモーター上で機能するか否かは不明. 2)単一の複合体で存在することが生化学的に証明しており, 複数の複合体との会合ではないと思われる. また精成成分の組み合わせが全く新規なので, 新しいクラスと考えている. <山本浩範氏>Positive VDREへのVDR/RXR/1, 25D3の結合はHAT複合体をリクルートしますが, negativeVDRE/VDIRへのVDR/RXR/1, 25D3の結合は, なぜHDAC複合体をリクルートできるのでしょうか. <加藤委員>リガンドー, +でもDNAに結合していないVDRは, 常にHDAC複合体と会合している可能性が考えられます. <須田委員長>1)1α-水酸化酵素はPTH→PKA系により誘導がおこるが, この促進作用におけるPKAの標的分子もVDIRか. 2)1α, 25(OH)2D3による1α-水酸化酵素の抑制はFGF23を介しておこると考えられているが, FGF23の1α-水酸化酵素誘導の抑制にもVDIRが関与するか. <加藤委員>1)すべてではないかも知れないが, 少なくても一部は担っている. 2)全く不明です. <山田委員>VDIRとVDRのcomplexでコンプレッサーが解離しないために負の制御が起こると説明されましたが, この作用がリガンド依存的であることが, 理解しにくい. なぜなら, リガンドの結合は一般にコンプレッサーの結合を不利にすると考えられているので. <加藤委員>相互作用は, VDRのhelixにのみならず, 他の領域やRXRと複合体構成因子体との問にもあると考えられます. 特にこの場合は, VDRがDNAに結合していないので, 違う立体構造と思います.
- 日本ビタミン学会の論文
- 2004-10-25
著者
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