Thiobacilliによる無機硫黄化合物の酸化 J. Ferment. Technol., 54,p. 361〜368,1976
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概要
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Thiobacillus delicatusは, 著者らが分離同定した任意独立栄養硫黄酸化細菌であるが, 有機物の存在により硫黄化合物の酸化速度や育成速度が増大すること, また, チオ硫酸イオンの酸化により多量のポリチオン酸イオンを蓄積すること等により興味ある細菌である.本菌の分離同定についてはすでに報告したが, 本報ではチオ硫酸イオンの酸化機構を解明するためThiobacillus delicatusと他に絶対独立栄養細菌Thiobacillus ferrooxidansを用い比較しつつ検討した.Thiobacillus delicatusによるチオ硫酸イオンの酸化では反応初期に4チオン酸イオンを生成し以後3チオン酸イオンと硫酸イオンを生成する.4チオン酸イオンからは好気的条件では3チオン酸イオンと硫酸イオン, 嫌気的条件ではチオ硫酸イオン, 3チオン酸イオンおよび硫酸イオンが生成した.また3チオン酸イオンからは好気的条件では硫酸イオンのみ, 嫌気的条件ではチオ硫酸イオンと硫酸イオンをモル比1対1で生成した.Thiobacillus ferroxidansについては好気的条件での実験しか行わなかったがこの場合はThiobacillus delicatusの場合とは幾分異なりチオ硫酸イオンと4チオン酸イオンの酸化において3チオン酸イオンの蓄積が認められず, 3チオン酸イオンの分解の際4チオン酸イオンを蓄積して最終的に硫酸イオンまで酸化した.以上の結果からチオ硫酸イオンの酸化経路を次の様に考えた.これらの細菌に対し硫酸イオンがエネルギー源として供給されるとチオ硫酸イオンは最初4チオン酸イオンに酸化される.ここで生成された4チオン酸イオンはチオ硫酸イオンと3チオン酸イオンに加水分解され, さらに3チオン酸イオンはチオ硫酸イオンに加水分解される.以上の経路によりチオ硫酸イオンは最終的に硫酸イオンまで酸化されるものと思われ, 細菌により反応生成物が異なるのは細菌により律速反応が異なるためと思われる.すなわちThiobacillus delicatusでは3チオン酸イオンの加水分解, Thiobacillus ferroxidansでは4チオン酸イオンの加水分解が律速となると思われる.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1976-06-25
著者
-
佐藤 次雄
東北大学反応化学研究所
-
溝口 忠昭
東北大学 環境保全センター
-
岡部 泰二郎
東北大学 工学部応用化学科
-
溝口 忠昭
(現)東北大学非水溶液化学研究所
-
佐藤 次雄
東北大学 工学部応用化学科
-
佐藤 次雄
東北大学 工学部
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