指数関数的に流加速度を増加させていくところの, メタノール資化性菌の半回分培養
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概要
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メタノールのように, 高濃度では, 誘導期の延長と, 増殖速度の低下を示し, かつ蒸気圧が高いため通気排ガス中に放散されやすいような基質を炭素源とする微生物の回分培養において, これらの困難性を克服するため, 一種の流加法(指数的流加法と仮称)について生物化学工学的な観点から研究した.すなわち, 培養液中の基質濃度は低く保たれ, しかも微生物は指数関数的に増殖し続けるように, 基質の流加速度を時間とともに指数関数的に増大させる方法である.まず, 微生物が指数関数的に増殖する(X=X_0・exp(kt))ための必要かつ十分な条件は, 基質の質量流量F_Mについて, F_M=(kX_0V/Y)・exp(kt), 初期基質濃度S_0について, S_0=f^<-1>(k)であることも明らかにした.そして, 指数的流加法においては, (1)基質濃度Sは培養期間中一定に保たれ, (2)微生物の比増殖速度μは, k≦f(s)_<max>の範囲内で, 外から任意に制御できるという2つの特徴があることがわかった.つぎに, 高濃度基質阻害のある場合について, 指数的流加法の安定性について検討を行ない, μ=f(S)とするとき, SがF'(S)>0の範囲では安定, f(S)≦0の範囲では不安定であることを理論的に証明した.この指数的流加法の実験を実施するために, 定速で回転する透明なドラム上に基質(メタノール)の流量変化に対応する黒い紙の図形を張り付け, その図形を, ドラムと平行に定速で移動する光電的検出端によって読み取り, 検出端に接続されたリレー回路により基質供給ポンプを作動させるような流量制御装置を製作した.この装置を使用して, メタノール資化性菌であり, かつビタミンB_<12>生産菌であるバクテリアの一株を培養した.安定領域での実験結果によれば, 理論通り, μはkと等しくなり, Sは流加期間中一定値に収束した.安定領域での4回の実験データと, 不安定領域での7回の実験データと, さらに3回の回分培養の実験データを, 高濃度基質阻害がある場合のμ(=f(S))とSとの間の実験式μ=μ_<max>/{1+(K_S/S)+(S/K_I)^n}にできるだけ合致するように, 最小二乗法で, n, μ_<max>, K_S, K_Iを決定した.最後に, この流加法で, ビタミンB_<12>性酸実験を行い, 50時間で, 2.46mg/lという成績が得られた.この値は, 非糖類を炭素源として得られたビタミンB_<12>生産醗酵の既往の研究結果よりはるかに高く, 指数的流加法はこの種の醗酵に有効であると結論した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1976-04-25
著者
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