L-グルタミンおよびN-アセチル-L-グルタミンの定量法と転換醗酵によるL-グルタミン生産条件の検討 : L-グルタミン酸醗酵からL-グルタミン醗酵への醗酵転換(第1報)
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概要
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1. 定量法 L-グルタミンおよびN-アセチル-L-グルタミン(N-AGM)はアルカリ下での水蒸気蒸溜によってアミド態窒素をアンモニアとして放出する. L-グルタミンが等電点溶液中でNa型カチオン交換樹脂と交換反応を起さないこと, N-AGMはNa型, H型カチオン交換樹脂に対する吸着性が極めて弱く水洗によって定量的に溶出されるなどの事実に着目してイオン交換クロマトグラフィとKjehldahl法の組み合わせによるL-グルタミンとN-AGMの新しい分析法を確立した. 試料はまずL-グルタミンの等電点のpHに調節し, Na型およびH型カチオン交換樹脂に通塔する. 前者の溶出液はL-グルタミンとN-AGMを含み, 後者の溶出液にはN-AGMが含まれる. それぞれの溶出液中のアミド態窒素はKjehldahl法によって定量しL-グルタミンおよびN-AGMの量が算出される. この方法によって発酵液中のL-グルタミンおよびN-AGMを定量した結果は, 回収試験によって高い分析精度を示した.2. 生産条件 L-グルタミンを発酵法によって製造することを目的としてL-グルタミン酸発酵からL-グルタミン発酵への転換要因を検討した. 多数のL-グルタミン酸生産菌についてL-グルタミン, N-AGM, L-グルタミン酸の生産と硫安濃度の関係を検討した. 3者の生成比は菌株によってかなり異っていたが, いずれの場合も硫安濃度の増加はL-グルタミンとN-AGMの生成を増加した. これらの菌株のなかからL-グルタミン生成能の良好な菌株としてCorynebacterium glutamicum KY9609を選択した. 本菌を用いてL-グルタミンの生成におよぼすアンモニウムイオン源の種類と濃度および培養液中のpHの影響について検討した. 菌体生育後のpHを微酸性に制御することによってL-グルタミン酸の生成が減少しL-グルタミンやN-AGMの生成が増加した. 硫安を使用する限りL-グルタミンの生成が全グルタミン酸誘導体の50%を越えることはなかったが, 塩安を使用することによってL-グルタミン酸の生成が極度に抑制されることを認めた. 高濃度の塩安による生育の抑制はビチオン濃度の増加や培養方法の検討によって回復し, L-グルタミン生成量のいちぢるしい増加を認めた. 同時にN-AMGの生成も増加した. 塩安4%を使用し上記のpHで培養を行なう場合はL-グルタミン酸の生成はほとんどなく多量のL-グルタミンとN-AGMが生成した. L-グルタミンの量はN-AGMのそれに対して約2倍となったが, この値は培養実験毎に若干の変動を示し, 上記以外の何らかの因子がL-グルタミンとN-AGMの生成比を制御しているものと推察した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1975-08-25
著者
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