n-Paraffin中における黒カビ胞子の熱死滅について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
微生物の細胞の耐熱性が水分の存否によって著しく影響されることはよく知られているが, n-paraffinのような疎水性媒体中における微生物の熱死滅に関する知見は極めて乏しい. 我々は, Aspergillus nigerの胞子が, n-paraffin中においても水中におけると同様によく分散することを見出し, その乾燥胞子の懸濁液を用いて, n-paraffin中における死滅速度とそれに及ぼす温度の影響について検討し, 水中の場合と比較した. その結果, いずれの場合にも胞子の死滅は対数法則に従うが, 死滅速度には大差があることが知られた. すなわち, n-paraffin中では80℃以下では胞子の死滅は殆んどみとめられず, 96.1℃における死滅速度定数が0.17min^<-1>であるのに対し, 水(pH7.0の燐酸緩衝液)中では50℃以下でもかなりの死滅がみとめられ, 48.7℃における死滅速度定数は0.13min^<-1>であった. また, 死滅の活性化エネルギーについても, 水中でのそれは182kcal/moleで, n-pafraffin中の70.6kcal/moleに比してはるかに大きな値であった. 一方, 斜面培養(40〜60日令)から集めたばかりの胞子(未乾燥胞子)の表面には約10%の水分が存在し, そのためn-paraffin中における未乾燥胞子の死滅には特異な現象がみとめられた. すなわち, 未乾燥胞子の懸濁液を60〜80℃に予熱したn-paraffin中に注入すると, 生存胞子数は注入直後にstep的に減少するだけでそれ以後は殆ど減少しないが, 同様な懸濁液を室温から所定温度まで徐々に加熱した場合には, step的な死滅は全くみとめられず, 所定温度において通常の対数的な死滅がみとめられた. これらの現象は. 胞子表面の水分による耐熱性の低下と, その水分のn-paraffin中への溶解による耐熱性の回復とによって説明された.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1975-10-25
著者
関連論文
- 菌糸懸濁液の攪拌における菌糸に与える衝撃の強さを表わす基準について : 糸状菌の液内培養における菌糸に与える攪拌の影響に関する研究 (第3報)
- Neurospora crassa のRNase N_1 生産におよぼす攪拌強度の影響
- Neurospora crassa のRNase N_1 生産におけるフラスコからジャーファーメンターえの培養規模の拡大 : 酵素生産に対する溶存酸素と攪拌の影響
- 458 n-Paraffin中における黒カビ胞子の熱死滅について
- n-Paraffin中における黒カビ胞子の熱死滅について
- 醗酵工業における原料の転換
- 炭化水素資化性菌の培養に関する基礎的研究 : (第2報)n-Pentaneの培養液への移動速度の測定
- 微生物による炭化水素の利用