Pseudomonas dacunhaeの結晶L-アスパラギン酸β-脱炭酸酵素の性質
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概要
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Pseudomonas dacunhaeより分離精製した結晶L-アスパラギン酸β-脱炭素酵素の酵素化学的性質について検討し次の結果を得た. 脱炭素活性はL-アルパラギン酸に対して特異的で, その至適pHは5.3であり, 47℃で最高活性が得られた. そしてDL-erythro-β-hydrozyaspartate, DL-threo-β-hydroxyaspartate及びL-cysteine sulfinateにより拮抗阻害を受け, そのK_i値はそれぞれ31,14及び125mMであった. 本酵素はピリドキサール燐酸並びに種々のα-ケト酸によって著しく活性化された. 最も効果の大きいα-ケト酸はα-ケトグルタール酸とオキザロ酢酸であり, α-ケトグルタール酸存在下では酵素は15倍に活性化された(85units/mg protein). L-アスパラギン酸を酵素に加えると, 360nmの吸収極大が直ちに325nmに移行し, これはα-ケト酸の存在によっても起る. 本酵素はpH5.3において脱炭酸活性の1/130のL-システインスルフィン酸脱亜硫酸活性と1/3,400のL-アスパラギン酸-α-ケトグルタール酸トランスアミナーゼ活性を有する. 精製段階でのこれらの活性の比率が一定であること, 及び熱失活又は酸失活の割合が等しいことから, これら三活性が単一の酵素によって触媒されていると考えられる. 基質飽和曲線はα-ケト酸やピリドキサール燐酸が存在すればnormal hyperbolicとなるが, これらのcofactor非存在下ではsigmoid curveとなる. K_m値はconfactor非存在下では5mMであるが, α-ケトグルタール酸又はピリドキサール燐酸が存在すれば1mMとなる. α-ケトグルタール酸及びピリドキサール燐酸はHill係数を1.35よりそれぞれ1.08及び1.07に低下せしめる. α-ケト酸と酵素との親和性はα-ケト酸の種類により異なるが, いずれのα-ケト酸が存在してもK_m値は1mMとなる. 大過剰のピリドキサール燐酸も同様な効果を有する. α-ケトグルタール酸を加えると酵素のトリプトファン残基に由来する蛍光に変化が起こり, conformational changeが起こったことを示唆する。又酵素を無水酢酸で処理すると, 活性に影響を及ぼすことなく, activatorであるα-ケトグルタール酸に対する感受性のみが失われる, 即ち脱感作される. 以上の結果より本酵素はα-ケト酸とピリドキサール燐酸をallosteric activatorとするアロステリック蛋白であると結論した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-12-25
著者
-
千畑 一郎
田辺製薬・生化研
-
加藤 錠治
田辺製薬(株)・生化研
-
柴谷 武爾
田辺製薬・生化研
-
加藤 錠治
田辺製薬・化成研
-
柴谷 武爾
田辺製薬(株)応用生化学研究所
-
柴谷 武爾
田辺製薬・応用生化研
-
柴谷 武爾
田辺製薬・医薬開発研究所
-
西村 紀之
田辺製薬・生化研
-
柿本 年雄
田辺製薬・応用生化学研究所
-
西村 紀之
田辺製薬・分析化研
-
柿本 年雄
田辺製薬応用生化研
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