麦酒酵母による麦芽汁発酵中のアセトハイドロキシ酸の生成
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概要
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麦芽汁を撹拌発酵させたところ, 麦酒のダイアセチル臭成分の前駆体であるアセトハイドロキシ酸は, 途中に明瞭な休止期をもった特徴的な曲線を画いて生成された. この休止期は麦芽汁中よりバリン並びにイソロイシンが酵母により急速にとりこまれる時期と一致しており, この期間中, 酵母細胞内の冷トリクロル酢酸可溶バリン並びにイソロイシン濃度は, その期間の前後より明らかに高まっている事実が認められた. 又, 麦芽汁にバリンあるいはイソロイシンを添加し, それらの濃度を高めて発酵させたところ, それぞれ, アセト乳酸あるいはアセトハイドロキシ酪酸生成の休止期が早期にはじまり, かつ, 長期に亘って持続した. これらのことから, バリンあるいはイソロイシンの急速なとりこみにより酵母細胞内でそれらの濃度が高まり, アセトハイドロキシ酸合成酵素が阻害されるため, アセトハイドロキシ酸生成曲線にこのような特徴的な休止期があらわれるのではないかと推定された. 更に, 麦芽汁にバリンを添加して発酵させた際, アセト乳酸の生成は抑制されたがアセトハイドロキシ酪酸の生成は抑制されなかったこと, 並びに, イソロイシンを添加して発酵させた際, アセトハイドロキシ酪酸の生成は抑制されたがアセト乳酸の生成は抑制されなかったことから, 従来, アセトハイドロキシ酸合成酵素はどの生物においても一種でありアセト乳酸の合成もアセトハイドロキシ酪酸の合成も行なうとされてきたが, 麦酒酵母にはバリンとイソロイシンにそれぞれ独立に感受性をもつ2種のアセトハイドロキシ酸合成酵素の存在することが推定された.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1973-08-25
著者
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