酢酸によるL-グルタミン酸醗酵 : (II)L-グルタミン酸生合成系におよぼす諸因子の影響
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概要
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酢酸を炭素源としてオレイン酸要求菌によるL-グルタミン酸醗酵を行なわせる場合の醗酵阻害因子について従来あまり検討されていなかった基質濃度(グルコース, 酢酸), 蓄積されてくるL-グルタミン酸, および塩化ナトリウムをとりあげ, 糖質による醗酵の場合と対比しながら解析した.これらの因子は, いずれもL-グルタミン酸生成収率を低下させるが, その作用機作の相異から2つの型に大別された.1つはグルコース, L-グルタミン酸, 塩化ナトリウムの作用であり, 他は酢酸の作用である.前者の場合, その濃度が増すにつれて顕著にL-グルタミン酸生成収率が低下し, 反対に菌体内L-グルタミン酸濃度の上昇, 基質の酸化活性の増大がみられた.さらに, グルコースや塩化ナトリウムを用いた実験では, 菌の生育が促進され, L-グルタミン酸排出能を阻害した.これに対して酢酸の場合には, L-グルタミン酸生成収率にのみ影響した.さらに, 高濃度のグルコースや酢酸, 塩化ナトリウムの存在下で培養した場合にも, 副生成物の量は, 標準条件で培養した場合に比べて特に差がみられなかった.これらの結果から, 高濃度のグルコース, L-グルタミン酸, 塩化ナトリウムは, 細胞外へのL-グルタミン酸輩出能を抑制することにより, 間接的に, L-グルタミン酸生合成系から完全分解系へ代謝転換され, 高濃度の酢酸は直接代謝上に影響をおよぼしてL-グルタミン酸生成収率を下げるものと推定された.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1972-03-25
著者
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