Diploid Saccharomyces rouxiiの育種とその安定性
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概要
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醤油・味噌醸造に重要な役割をはたす酵母であるSaccharomyces rouxiiは, その活性史のほとんどを単層(haploid)の状態ですごすヘテロタリックな酵母である。著者らは, その復相株(diploid)の造成による育種改良を試み, その方法について前報で報告した。本報では, 前報に示した方法に従って, 著者らが醤油・味噌諸味中より分離した数多くの接合型の異なるhaploid S. rouxiiの種々な組合せからdiploidを造成することを試みた。いずれの組合せからもdiploidを造成することが可能であったが, diploidが得られる割合はその組合せによって異なった。また, authentic haploidのNRRL-2547および-2548株から得られたdiploidが, その四胞子解析の結果, 接合型が2a対2αの分離比を示したことから, 前報に記した培数性の測定結果と共に, これがヘテロザイガスなdiploidであることを確認した。 これらdiploidは, いずれも親株と同程度の耐塩性を有し, 液体培地では, 糖, 窒素源および食塩濃度のいかにかかわらず安定であった。寒天培地では, 一般に不安定であったが, 特に, 5%程度の食塩の存在下では非常に不安定でいずれもhaploidに復帰した。しかし, 20%の高濃度の食塩を含むyeast maintenance agarでは, 7ヵ月後においてさえも安定であった。これらdiploidの胞子形成には, 5%の食塩を含むグルコース欠のyeast maintenance ager (pH5.0)がもっともすぐれていた。この様なことから, 実際の醤油醸造に好ましい性質を持ったhaploid S. rouxiiのかけ合せにより, 両者のすぐれた性質をとったdiploidが得られる可能性があり, これは今後のS. rouxiiの育種改良の一つの方向と考えられる。
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1969-06-25
著者
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