NMRによるホップ苦味酸同族体の定量
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概要
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ホップ苦味酸(α酸およびβ酸)の同族体組成の分析法は, 従来向流分配法あるいはガスクロマトグラフィー(GC)による方法が用いられてきたが, これに代る方法として, 1964年にAlderweireldtおよびVerzeleは, 溶媒中では何れの苦味酸もアシル側鎖と分子内水素結合を形成したエノルプロトンを有することに基づき, NMRによる定量法の可能性を指摘した. しかし, 彼等は実際のエノルプロトンのNMRスペクトル或いは詳細な分析データはその後何ら発表していない. そこで著者らは従来法により迅速かつ容易な分析法としてNMR法の確立を目指した. 著者らの実験によれば, 彼等の記述とは少し異なり, 各同族体のエノルプロトンは全てが水素結合をしているとは限らず, 非結合のエノルプロトンと一定の平衡状態下で共存するものであり, かつ両者の平衡状態下は同族体によりかなり異なるので, 見掛けのピーク面積から対応する同族体量を直接計算することはできない. そこで著者らは, 測定条件下における各同族体の平衡状態と分子量の両者を加味した係数を各同族体について設定した. 実際の分析に当ってはホップより単離したα酸またはβ酸を用いてNMARスペクトルを測定し, 得られた共鳴ピークの見掛けの面積に, 対応する係数を乗じた後に同族体組成を計算すればよい. またこの方法による分析値はGC法の値と極めてよく一致した.次にここに確立したNMR法を用いてホップ球花生育中における苦味酸同族体の推移を見たところ, 苦味酸が植物体中で生合成される時期は同族体によりかなりのずれがあることが分った. さらに特殊なホップとして栽培中に人工光線を照射したホップは全α酸含量が増加し, また"倭化病"ホップは全α酸含量が異常に減少することが知られているので, 同様分析を行なった結果, 苦味酸の生合成に関する有用な知見が得られた.
- 公益社団法人日本生物工学会の論文
- 1969-12-25
著者
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古久保 瑛一
麒麟麦酒(株)総合研究所
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黒岩 芳朗
麒麟麦酒(株)総合研究所
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黒岩 芳朗
The Research Laboratries of Kirin Brewery Co., Ltd.,
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小若 雅弘
The Research Laboratories Of Kirin Brewery Co. Ltd.
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古久保 瑛一
The Research Laboratories of Kirin Brewery Co., Ltd