水銀耐性細菌の菌体再使用による廃水中の無機水銀化合物の除去に関する研究
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概要
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水銀化合物は一般に生物に有害な物質であり, 殺菌剤として広く利用されて来た. また, 無機水銀化合物は化学工業では触媒として利用され, その微量が廃水中に流出することが社会的問題となっている. 当研究室では, これまでに水銀に耐性を有する細菌を土壌より分離し, その機能を調べて来た. この菌はシュウドモナス属に属し, 水銀化合物を水溶液中より菌体に吸着し, 培養条件によって吸着した水銀を空気中に放出することがわかった. そこでこの機能を利用して廃水中の無機水銀化合物を除去する方法を検討した. 約15ppm の水銀を含む液中にこの菌を 5×10^8/ml の濃度で添加し, 30℃に静置すると30分間で約90%の水銀が菌体に吸着した. この菌を遠心分離によって集め, 0.1%のカザミノ酸を含む合成培地にけん濁し, 30℃で振盪培養すると, 4〜6時間で約70%の水銀が気化した. この菌を遠心分離で集め, ふたたび水銀溶液中にけん濁すると, 1回目と同じように水銀を吸着し, 培地に移すと同じように気化した. このようにして吸着と気化のサイクルを繰返すことにより水銀を能率よく除去することが出来た. 菌は活性を低下させることなく, 少なくとも3回繰返して使用することが出来た.気化した水銀は活性炭により能率より回収された. この方法を実際に廃水に適用し, 前処理を適当に行なえば, 廃水中の水銀化合物が能率よく除去出来ることがわかった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1968-12-25
著者
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