制癌剤5-Fluorouracil投与による免疫低下マウスに対するレチノイドの影響
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概要
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ICRマウスに制癌剤5-Fuを20~30mg/kg隔日5回腹腔内に投与すると,投与期間中体重増加の抑制を伴う免疫系の機能低下をきたすことが示された.特に,胸線や白血球,骨髄細胞に対する作用は強く,臓器の萎縮や細胞数の減少が認められた.しかし,5-Fuの投与を中止すると,軽度の影響を受けた脾や腹腔細胞はもとより,影響が最大であった胸線においてもコントロールと同レベルまで回復することが認められた.この結果を基に,C3H/Heマウスに5-Fuを25mg/kg隔日5回投与することにより比較的軽度の免疫低下モデルを作製し,この系を用いてRAおよびA-palの免疫低下防止効果を検討した.その結果,レチノイドは体重に対して5-Fu投与中はほとんど影響することはなかったが,投与中止後の体重を正常値に回復させる傾向を認めた.免疫担当臓器に対する影響としては,5-Fu投与による脾,胸線の重量減少を,RAおよびA-palで抑えることはできず,効果は認められなかった.一方,免疫担当細胞に対する影響は,5-Fu投与による白血球数減少をRA,A-palともに抑制することが認められた.しかし骨髄細胞数および腹腔細胞数の減少を抑制する効果は認められなかった.リステリアに対する遅延型過敏反応については,5-Fu投与においてもあまり低下せず,レチノイドの効果を判断することはできなかった.リステリアに対する一次感染抵抗性については,5-Fu投与で脾の殺菌作用が低下し,臓器内菌数が増加し,死亡率が上昇したのに対し,レチノイド特にRA投与により臓器内菌数の減少や死亡率の低下など,顕著な感染防御効果がみられた.またレチノイドに直接的抗菌活性は認められないことから,これらの効果は宿主介在性であると考えられた.以上の結果から,RAおよびA-palは,5-Fu投与によるマウス免疫機能低下および感染抵抗性の低下を防止する効果を有することが確認された.
- 日本ビタミン学会の論文
- 1992-03-25
著者
-
光山 正雄
九大細菌
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光山 正雄
新潟大学医学部細菌学教室
-
大森 俊弘
雪印乳業(株)生物科学研究所
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柳井 捻
雪印乳業(株)生物科学研究所
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川西 悟生
雪印乳業(株)生物科学研究所
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柳井 稔
雪印乳業株式会社栄養科学研究所
-
川西 悟生
雪印乳業 生物科学研
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