樹冠遮断のエネルギー収支特性
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概要
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閉鎖したヒノキ人工林の樹冠遮断量を予測モデルを用いて推定し, 実測遮断量との間によい一致をみたので, それに基づいて樹冠遮断をエネルギー収支の観点から解析した。その結果, 以下のことがわかった。樹冠遮断には飽差と風速が密接に関係し, 両因子が大きくなると樹冠遮断量も増大する。降雨中, 降雨後の遮断蒸発強度はそれぞれ0.25,0.16mm/hrで, 一降雨の平均蒸発強度は0.19mm/hrと推定された。なお, 遮断蒸発強度には季節変化が認められなかった。有効放射量に対する遮断蒸発量の比は, ほぼ0.5〜5.0の範囲で変化し, その平均は1.6であった。また, 遮断蒸発のボーエン比はその大部分が-0.9から0.5の範囲にはいり, ボーエン比が負になる頻度が高いことが指摘された。これらのことから, 遮断蒸発量はしばしば有効放射量を上回ること, その強度は同一気象条件下の蒸散強度に比較して大きいことが明らかになった。このように遮断蒸発が大きいのは, 周囲群落がエネルギー供給し, 当該林分がエネルギーの吸源となっているためと推察された。
- 日本森林学会の論文
- 1985-09-25
著者
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