スギの寒風害抵抗性におよぼす種子源と植栽方式のちがいによる効果
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概要
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スギの植栽後数年間の寒害抵抗性は, その苗木のもっている遺伝的な形質と植栽方法の工夫による人為的防除効果とが考えられる。この二つの因子が実際にどのように現われるかを調べてみた。そこで, 通常タネの移動の行なわれている比較的せまい範囲で, しかも環境条件のはなはだしく異なる8カ所の母樹林からタネをとった。そして各母樹林ごとに育苗し, これらの苗木群を寒害防除を考慮した3種の方式で寒冷地に植栽し, その残存率を比較した。植え方は, 1)普通の1本植え, 2)2本の寄せ植え, 3)スギとシラベ1本ずつの寄せ植え, の3種とした。植付けてから1冬経過した翌年の春に残存率を調べたところ表-2の結果を得た。このときの枯損はすべて寒風害によるものであった。これによると, 苗木群の残存率は, わずか4,500km^2のせまい範囲からとったにもかかわらず, 母樹林によってかなりの差があった。しかし, この残存率と母樹林の育った環境条件(標高, 年平均気温, RF)との間には, 有意な相間々係は認められなかった。これは母樹林がすべて人工林であり, 十分に環境によるとうたが行なわれていないためとおもわれた。また植栽方式では, 3)の方法でシラベのような常緑針葉樹と一緒に寄せ植えした場合の残存率は, ほかの二つの方法に比べて著しく高くなっていた。しかし, 苗木群の遺伝性と植栽方式との交互作用は認められなかった。
- 日本森林学会の論文
- 1971-12-25