冷凍貯蔵によるブナ堅果の長期貯蔵の可能性 : 貯蔵1年目の結果
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概要
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ブナの堅果を安定的に確保するために長期貯蔵試験を実施している。本報では, 前処理と貯蔵温度を変えて貯蔵した1年目の結果を報告する。前処理として風乾温度を変えて堅果の乾燥状態を4段階に制御した(無処理堅果 : 平均含水率30%, 弱乾燥処理 : 11.3%, 中乾燥処理 : 6.1%, 強乾燥処理 : 4.0%)。前処理を終えた堅果はそれぞれ2℃(冷蔵条件)と-20℃(冷凍条件)の温度で貯蔵した。貯蔵せずに処理後ただちに播種した場合には, 乾燥程度の強い堅果ほど発芽率が低かったが, 1年間貯蔵した後では無処理の堅果はほとんど発芽しなかった。2℃で貯蔵した場合には弱乾燥処理の堅果も発芽能力を失ったが, -20℃で貯蔵したものは同じ乾燥状態で51.7%が発芽していた。中乾燥処理をした場合には冷蔵および冷凍貯蔵で50%前後の高い発芽率が得られた。従来, ブナは乾燥による貯蔵が困難とされてきたが, 本試験の結果は, ブナの堅果はオーソドックス種子として扱えば長期間の貯蔵が可能であることを示唆しており, この場合は他のオーソドックス種子で採用されているように, 5〜10%程度まで乾燥処理(本試験では6.1%の中乾燥処理がこれに相当)を行い, -20℃の条件で貯蔵する「冷凍冷蔵」が将来的に最も有効ではないかと推察された。
- 日本森林学会の論文
- 2000-02-16
著者
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