茨城県の森林立地区分(II) : 林齢, 地位, 立地区によるスギ針葉の養分濃度の変動について
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概要
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自然環境の類型化によって区分された森林立地区について, その栄養的特徴を調べるために葉分析による栄養解析を進めているが, これらの解析の手はじめに, 当年生葉の養分濃度が, 林齢, 地位, 立地区によってどのように変わるものなのかをこの報告では検討した。1.調査林分は, いろいろな地位の, 林齢19〜62年の閉鎖したスギ壮齢林で, 八溝(古生層), 里川(花崗岩, 変成岩類), 珂北(第3紀層)の3立地区から選ばれた。2.葉分析値は, 林齢階別, 地位指数階別に2元分類し, 立地区を繰り返しとして, 林齢および地位による変動を, 立地区による変動に対比させるといういわゆる2元配置の分散分析法によって検討した。3.その結果, 林齢と葉の養分濃度との関係については, N, P, K, Ca, Mg等いずれの要素についても, ベースにした立地区間の変動が相対的に大きく, 林齢間には有意な差はなかった。ただ, 元来が土壌中のNに乏しい珂北立地区の葉のN濃度の場合には, 低い林齢階での濃度がやや高く, 傾向的には違いがあるように思われた。これに対して, 地位による葉の養分濃度の変動にはN, PおよびK濃度などについては有意差が認められ, 地位の高いほどN, P濃度は高く, K濃度は低くなるような傾向があった。また, 立地区間には, Ca濃度にかなりの違いがみられた。4.なお, 林齢と葉の養分濃度との関係について, 参考までにとられた閉鎖前の幼齢林との比較では, 幼・壮齢林間に違いがみられ, N, K, Mg濃度については幼齢林の方が高く, Ca濃度は反対に壮齢林の方が高かった。5.以上の結果から, 壮齢林の場合に, 葉分析試料木の林齢による濃度差は, 閉鎖直後の不安定と思われる林分を除いて, 一般的には地位や地域差に基づく濃度変化に比べればそれほど大きくはないように考えられた。
- 日本森林学会の論文
- 1972-03-25
著者
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