西谷啓治における「空」の思索の深化
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概要
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西谷啓治の宗教哲学においては、その中心テーマである「空」を捉える視点は中期(『宗教とは何か』、とりわけ論文「空の立場」) と後期(最晩年の論文「空と即」)ではやや異なっている。第一に、「空の立場」では「回互的関係」が根源的なものと見なされているが、「空と即」では「回互的関係」自体を成立せしめるより根源的な空の場として「不回互」の問題が見られている。それに呼応して、「一即多、多即一」として捉えられた回互的関係に基づく理事無礙的な世界の極限を、述べるや否や不回互な事々無礙的沈黙へと転入する「一即零、零即多」という「零」を用いた表現でもって言い表す試みがなされている。第二に、「空の立場」では、「空」が人間の感性ないし理性において「映さ(移さ)」れることに否定的な態度が取られているが、「空と即」では構想力ないしimageにおいて「空」が「映さ(移さ)」れることに積極的な意義が見出されている。「空の場」に転入することによってニヒリズムの克服をめざした西谷は、その後も更に「空の場」の分節を進めその思索を深化させ、宗教的世界に本質的な問い、すなわち現実世界を通底する絶対的矛盾の問題と宗教的世界の感受体としての構想力の問題を提示する試みをしている。
- 日本宗教学会の論文
- 2003-12-30
日本宗教学会 | 論文
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