システムエンジニアの問題解決を支援するQ&A方式に基づく情報提供の枠組みとその効果に関する研究(知識管理)(<特集>人工知能分野における博士論文)
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概要
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システムエンジニアがソフトウェア開発において生じるさまざまな問題を解決するために必要とする情報は膨大であり, その複雑性や多様性は増大する一方である.これらの情報は実際の問題状況に即してドキュメント化されているわけではなく, 実際の問題状況に即した情報は個々のシステムエンジニアのノウハウや経験として蓄積されている.このためシステムエンジニアはほかのシステムエンジニアに対面で質問することにより必要な情報を獲得しているのが現状である.その結果, 質問される側のみならず質問する側の作業効率も低下し, 組織全体のコミュニケーション効率も低下する.他者への質問そのものは, 問題状況に即した情報を迅速に獲得できるとともに, 他者からの回答および自分で記述した質問により問題状況が再認識されるため, 問題解決の質と効率を向上させるために有効である.本研究ではQ&A方式によりシステムエンジニアの問題解決を支援するとともに, Q&Aの組織知としての蓄積を可能とするコンピュータを用いた枠組みを構築・実装し, その評価を行った.その結果, (1)問題状況に即した情報の迅速な獲得, (2)回答による問題状況の再認識, (3)質問による問題状況の再認識, (4)Q&Aの再利用性の向上, という四つの効果を確認することができた.1章では本論文の主要題目について説明し.2章ではシステムエンジニアに要求される情報に着目してソフトウェア開発支援を行う研究の課題と対面での他者への質問により必要な情報を獲得しているという現状の三つの弊害について論じる.3章では他者への質問による問題解決における三つの効果を示し, これらを高めつつ現状の三つの弊害を解消するための枠組みと再利用性向上を加えた四つの効果について4章で論じる.5章では実際の事例に基づく効果の検証ついて論じ, この検証結果に基づいた本枠組みを改善するための枠組み「コミュニティ知識べース環境」を6章で提案する.今後のソフトウェア開発という観点からの考察を7章で論じ, 最後に8章で総括する.
- 社団法人人工知能学会の論文
- 2001-11-01