網膜双極細胞の情報伝達特性に関する生理工学的研究
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概要
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本論文は, 網膜第二次ニューロンである双極細胞のイオン機構が視覚情報の伝達・処理に果たす役割を明らかにすることを目的とした研究である.1章では, 生理学的に見出された網膜情報処理機構に関する分析的知見を数理モデルとして記述・統合し, 計算機シミュレーションを通して解析する生理工学的手法の意義と有効性について述べている.2章では, 網膜の視覚情報処理における双極細胞のイオン機構が細胞体, シナプス終末で著しく異なることを述べ, 3章では, そうした神経細胞のイオン機構の細胞生理と, その等価回路表現に基づくモデル化手法について概説している.4章では, 細胞体に存在する5種のイオン電流に関する数理記述, 5章では, シナプス終末に局所的に存在する3種のイオン電流, 2種のカルシウムイオン排出系および細胞内カルシウム機構に関する数理モデル記述について述べ, そのシミュレーションによりシナプス終末の機能を解析している.6章では, 構築した細胞体, シナプス終末の各サブモデルをオン型杆体双極細胞もモデルへ統合し, 細胞体-シナプス終末間の伝達特性および光応答について解析している.これらの結果から, 双極細胞は入力信号を単純に神経節細胞へ伝達するだけでなく, そのイオン機構により視覚情報を能動的に処理していること, 特にシナプス終末の膜電位変化が光応答のダイナミクス形成に強く関与していることを明らかにしている.
- 社団法人人工知能学会の論文
- 2000-11-01
著者
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