べと病罹病組織磨砕液によるダイコン根でのリグニン誘導
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概要
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べと病罹病組織磨砕液で健全ダイコン根切片を処理すると約12時間後に細胞壁の木化が起こるが, 磨砕液処理後30分間以内に核酸合成阻害剤を, 2時間以内にたんぱく合成阻害剤を添加すると木化が起こらないので, リグニン誘導には核酸およびたんぱく質の合成が必要である。磨砕液処理後2時間以内に切片を水で再処理すると木化が起こらないが, これ以後の時間での再処理では木化が起こった。これはリグニン誘導には磨砕液が少なくとも2時間は生組織に接触している必要があり, 一度誘導が起こった後は磨砕液を除去しても効果がないことを示している。さらに磨砕液処理切片を嫌気状態(N_2ガス下)におくと12時間以内では木化が起こらず, それ以後の時間では木化が起こるので, リグニン誘導には酸素を必要とする反応があることを示唆している。また組織を熱処理(55C, 30秒間あるいは50C, 60秒間)して直ちに磨砕液処理すると木化は起こらないが, 熱処理したものを24時間放置(20C)しておくと, 磨砕液処理によって木化が起こった。これは熱処理によって生細胞での一時的変化が起こり, リグニン誘導能が麻ひするが, 24時間後には回復することを示唆する。このような磨砕液のリグニン誘導能は, その中にリグニン誘導因子が含まれているためと思われるが, この因子は病原菌が直接分泌したものではなく, 病原菌の感染によって宿主が生成したものである。この誘導因子は病態組織のみでなく少量ながら切断傷害組織でも生成され, 病態および切断両組織磨砕液処理によって生成するリグニンは, ともにグアイアシル型の同じ性質のものである。したがってべと病菌の感染による宿主のリグニン生成は, 一種の傷害に対応する反応であり, 吸器貫通による宿主原形質膜の傷害がその原因ではないかと考えられる。
- 日本植物病理学会の論文
- 1978-01-25
著者
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