熱処理ダイコン根組織におけるべと病菌吸器形成の抑制
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概要
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ダイコンベと病菌吸器形成に及ぼすダイコン根組織への接種前熱処理の影響を調査した。べと病罹病性品種の自首宮重および抵抗性品種の平安時無の根組織(5×5×3mm)を, 50℃の温水に30秒間以上浸漬後に本菌を接種すると, 本菌の吸器形成がともに抑制され, 菌糸様構造物として細胞内に生育伸長し, 時として隣接する細胞内にも侵入したが細胞間隙には入らなかった。この構造物の形成は50℃-60秒間処理で最多となったが, その生育伸長は接種24時間後には停止した。熱処理による吸器形成の抑制効果は50℃-30秒間処理では処理24時間後には失われたが, 50℃-60秒間処理では処理48時間後以降も持続した。CTC蛍光観察により, 吸器に膜結合性のCa^<2+>の特異蛍光が認められたが^<3,19)>, 菌糸様構造物にはこの蛍光はほとんど観察されず, 吸器とは性質が異なっていた。また, 熱処理ダイコン根組織のべと病菌侵入部位にはリグニンおよびカロースの蓄積が認められないこと, 非病原菌であるウリ類炭そ病菌の感染が同組織で観察されること, 熱処理根摩砕液にはべと病菌吸器抑制効果が無いことが観察された。また, 細胞膜ATPase活性は熱処理により抑制されることが観察された。以上の結果から, べと病菌吸器形成の抑制は宿主の抵抗反応によるものではなく, 吸器形成に関与する宿主細胞の代謝機構が熱処理により可逆的あるいは非可逆的損傷を被ったためであると推定され, べと病菌吸器形成に宿主細胞の応答が重要であることが示唆された。
- 日本植物病理学会の論文
- 1998-08-25
著者
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