IPマルチキャストの配送制御とそのセキュリティへの応用

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近年,インターネットにおける効率の良い大規模情報配布技術としてIPマルチキャスト(同報)による通信が注目されている.特にミッションクリティカルな情報を配布するために,配布の信頼性を確保する高信頼同報が検討されているが,他方同時に,配布情報の秘匿や送信者の認証,配布サービスの保全などのセキュリティ機能が必要であり,その方式を検討する必要がある.情報秘匿・認証については,1対1通信で使われている暗号による秘匿では,大規模配送において鍵更新のオーバヘッドが大きくなるために問題を生じることが指摘されている.他方,システム保全については,現状のIPマルチキャストでは対策がとられていないが,アクセス・配送制御機構の導入を考えることができ,筆者らによる出入口(egressとingress)ルータによる制御方式とマルチキャスト経路制御による方法が提案されているが,後者は利用できる経路制御方式が限定されているので,インターネットにおいては前者を主とした方式が望ましい.ところで,システム保全の手段として導入する配送制御が,許されていない所へ配送しないことによって,情報秘匿の手段としても有効である.配送制御は制御オーバヘッドが配送規模に依存しないため,大規模情報配送では暗号による秘匿に代わる秘匿手段であり得るが,他方秘匿性に弱い面があるので,秘匿性の実現手段としての暗号と配送制御を使い分ける必要がある.そのとき,秘匿性の要求と配送規模が相反する場合が多いという仮説を立て,暗号と配送制御を使い分けることにより,多くの場合で,必要な秘匿性が妥当なコストで実現できることを主張する.すなわち,秘匿性と配送規模がともに大きいことは少なく,秘匿性の要求が高く配送規模が小さい場合には暗号を使い,配送規模が大きく秘匿性が小さい場合には配送制御に依ることができる.
一般社団法人情報処理学会の論文
2000-01-15

IPマルチキャストの配送制御とそのセキュリティへの応用

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