ステファン問題の有限要素解析に現れる非対称行列に対するPCR法
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概要
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ステファン問題を有限要素近似したときに現れるような疎な非対称行列を係数に持つ連立一次方程式を解くためにPCR(1)法(ILUCR(1)法)を効率的に適用することを考察する. この問題では, 時間によって変化する係数行列を持つ連立一次方程式を多数回解くことが必要になるが, 各時刻ごとの係数行列の変化は小さい. また, PCR(1)法は, 不完全LU分解の計算に多くの時間を要する. 以上のことを考慮して, 前処理のための係数行列の不完全LU分解は初期時刻においてのみ行い, このLとUの蔵の逆(LU)^<-1>を以後すべての時刻における前処理に用いる方法を採用する数値実験の結果, PCR(1)法の初期値を1段階前の時間ステップの解に選ぶと, 収束に必要な反復回数は各時刻でほぼ一定で, われわれの方法は非常に効率的であることがわかった. この理由を調べるために, 各時刻ごとに係数行列の固有値分布の変化とPCR(1)法の残差ノルムの減少の様子を調べた. その結果, 前半の時間ステップでは前処理の効果によって固有値の縮重度が高く, 残差ノルムの減少が速くなること, 後半の時間ステップでは固有値の縮重度は低く, 残差ノルムの減少は遅くなるが, 初期残差ノルム自体が小さくなっていくために残差ノルムの減少の遅さをカバーしていることがわかった.
- 社団法人情報処理学会の論文
- 1985-11-15
著者
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