SOR法のベクトル計算機向き書換えによる効率の低下
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概要
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偏微分方程式を差分法で離散化した連立1次方程式をSOR法を使ってベクトル計算機上で解く場合に,ベクトル計算機向き書換えが逆に効率の低下を招く可能性があることが理論的に知られている.そこで,本論文の目的は,その理論的事実を実際にスーパコンピュータ上で実証することにある.また,理論的な考察が行われている規則的な直交座標系のみでなく,一般曲線座標系の問題においても,その理論的事実がそのまま適合することを実験的に明らかにする.一般にベクトル計算機向き書換えには色々な技法が知られているが,本論文ではSOR的方法あるいは擬似SOR法(付録1参照)と呼んでいる方法を取り上げる.この方法はSOR法が本来持つ収束率の低下を犠牲にする代わりにできるだけ長いベクトル長を確保しようという考えに基づいている.一方,Hyperplane法と呼ばれるベクトル化技法が広く使用されている.この方法は再帰的関係を取り除くように計算順序を並び替えることによって,記R法本来の収束率を保持しようという考えに基づく.本論文では,以上二つの書換え,すなわちベクトル長の増大を優先的に考える方法:擬似SOR法と,収束率の保持を優先的に考える方法:Hyperplane法によるSoR法のどちらが実際に効率的なベクトル計算機向き書換えであるか比較を行う.テスト問題としてDirichlet条件を含む境界値問題とNeumann条件を含む混合型境界値問題を取り上げ,前者については理論の検証に重点を置き,後者については固有値解析を中心に考察を行った.さらに座標系に関しても,直交座標系の問題に加えて応用面でよく使われる一般曲線座標系の問題も取り扱った.その結果,擬似SOR法は,使用したすべてのベクトル計算機においてHy唾rpl山e法によるSOR法と比較して効率が大幅に低下し,ベクトル計算機の高速性を引き出す書換えになっていないことが実験的に確かめられた.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1991-03-15
著者
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