タバコモザイクウイルス感染数種ニコチアナ植物におけるβ-1, 3-グルカンハイドロラーゼ活性の比較
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概要
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タバコモザイクウイルス (TMV) の普通系 (TMV-OM) およびトマト系 (TMV-T) を接種した数種の Nicotiana 属植物におけるβ-1, 3-glucan hydrolase 活性の変化を調べた。TMV-OMに感染した N. glutinosa と N. tabacum var. Xanthi-nc, および TMV-T に感染した White Burley では, 局部病斑の出現と共に著しい酵素活性の増加がみられたが, TMV-OM に感染した White Burley と Xanthi では,その増加はみられなかった。局部感染性の植物における酵素活性は, 高濃度のTMVを接種したときに高く, また, 局部病斑域はその周辺組織より高かった。しかし, 物理的 (高熱白金耳処理) および化学的処理 (3N 塩酸処理) で人工的に壊死斑を形成させた葉では, その酵素活性の変化は見られなかった。つぎに, N. glutinosa の感染葉を切りとり, 連続 25C と初め 35C に保ち, その後 25C に移して培養したとき, その酵素活性は顕著に増加し, その場合には局部病斑が形成された。しかし, 連続 35C で培養したときには酵素活性の増加も局部病斑の形成も認められなかった。また, N. glutinosa の感染葉を蒸留水に浮べて暗黒, または10^<-4>M DCMU 溶液に浮べて連続照明 (5,000lux)下, 25C で培養したとき, その酵素活性と局部病斑数は減少したが, 暗黒下で glucose を与えると, 両者は連続照明下で培養したときとほぼ同じ値を示した。一方, laminarin を含むポリアクリルアミドゲル電気泳動において, 本酵素は TMV-OM 感染の N. glutinosa, Xanthi および White Burley では1本のバンドとして確認されたが, TMV-OM 感染の Xanthi-nc および TMV-T 感染の White Burley では移動度の異なる新しいバンドがさらに1本認められた。本研究において, TMV strains の接種により局部病斑を形成する Nicotiana 属植物では β-1, 3-glucan hydrolase 活性の特異的な増加が認められた。TMVの感染によって起こる β-1, 3-glucan hydrolase 活性の急激な増加は, Local lesion の形成に必要な Glucan 合成のために起こるものと推察されるが, これは今後の研究によって検討する。
- 日本植物病理学会の論文
- 1986-04-25
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