雇用システムの構造変化と女性労働(<特集>日本経済のリストラクチャリングと雇用の地理)
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概要
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近年,わが国の雇用システムが変化している.内部労働市場が深化している日本企業において,平均的に企業定着の低い女性は,男性と異なる取り扱いを受けてきた.雇用システムの再編が女性労働にどのような影響を及ぼすのか,というのが,本稿の問題意識である.まず,内部労働市場における雇用管理に関してみると,1990年代に男女均等な雇用管理は,施策によって横ばいないし低下傾向で推移した.ただし,男女均等な雇用管理は,女性の企業定着及び女性の管理職比率を高めており,この関係は,90年代後半に強化され,女性のキャリアが内部労働市場に取り込まれつつあると考えられる.また,近年の非正規労働者の急速な拡大は,正規労働者が担ってきた基幹的な業務を非正規労働者に移行するという「基幹労働力化」を伴っていた.非正規労働者の基幹労働力化を企業が明確な意図をもって進め,そのための様々な制度対応が行われている.非正規労働者の中で労働者の選別を強化しつつ,優秀層を内部化していく動きが読み取れる.女性正規労働者のキャリアが男性正規労働者のキャリアに徐々に接近するとともに,非正規労働者のキャリアが正規労働者のキャリアと重複するという形で,企業内に重層的な労働市場が形成されつつあると考えられる.これに伴い,女性のキャリア展開の多様性が従来以上に高まり,キャリアパースペクティブが拡大する可能性を示しており,多様な就業を実現する公正な処遇が今後の課題である.
- 2002-12-31