日本における "Mid-Neogene climatic optimum" について
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概要
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海棲動物化石に基づいたMid-Neogene climatic optimumという語によって示唆されている最温暖期と大型植物化石に基づいた中新世の最高温暖期とはやや層位的に異なったものを指している.それはそれぞれの化石の産する堆積物が海成と非海成と異なるからである.化石花粉は海成・非海成の両方の堆積物中に普遍的に産するので, これを用いてこの両方の最温暖期を検討してみた.その結果以下のことが明らかになった.(1) Mid-Neogene climatic optimumとして想定されている最温暖期は16Maにはなく, それより前の時期(台島階), (その年代については17Maから22Maまでいろいろな見解がある)にあり, 16Maの時期は温暖ではあるが最温暖期ではない.北海道(道西南部を除く)では16Ma頃は冷温な時期であった。(2)いままで報告された大型植物化石の産出層準と放射年代によれば, 台島型植物群によって指示される温暖期は17Ma以後13-14Ma頃まで続くが, その間に少なくとも2回の冷温期を含むなど温冷の小さな変動を伴いながらも, 全体として冷温化していった.この温暖期全体をMid-Neogene climatic optimumと定義するか, 17Ma以前の最温暖期のみに限るかを検討する必要があろう.(3)今まで各地で報告されている阿仁合型植物群・台島型植物群の中には, 17Ma以後の温暖期に介在する副次的な冷温期や温暖期のもので, それが中新世最初期の冷温期(いわゆる阿仁合型植物群で指示される)や17Ma以前の最温暖期(いわゆる台島植物群で指示される)に当たるものと考え違いされているものがある.中新世の地史やこの時代の地層の対比にはこのような考え違いに基づいたものもあるので再検討の必要があろう.
- 日本古生物学会の論文
- 1992-11-30
著者
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