918. 大桑層における 1.2 Ma を境とする古環境の変化
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概要
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大桑層の古環境は, 下部-中部の境界(年代1.2 Ma)で著しく変化した。大桑層中部には, 氷河性海水準変動(最大振幅50m, 平均周期28, 000年)に起因する堆積サイクルの繰り返しと貝化石群集の周期的変化が見られる。一方, 岩相・貝化石群集から, 下部の堆積環境は, 堆積期間(少なくとも16万年間)のほとんどを通じて, 水深30mより浅い海域であったと推定される。このような浅海域であったにもかかわらず, 下部には中部に見られるような氷河性海水準変動の記録が観察されない。このことは, 1.2 Maを境としてそれ以後, 氷河性海水準変動の振幅が増大したことを示唆すると考えられる。暖流系貝化石群集に示される暖流の流入は, 大桑層中部(堆積期間は30万年間)では少なくとも9回であったのに対して, 下部堆積時には1回しかなかった。この暖流流入の頻繁化も1.2 Ma以降の氷河性海水準変動の振幅増大に原因があると思われる。この年代は, ヨーロッパや北アメリカで氷河作用が強化され始めた時期に一致する。すなわち, 氷河作用の強化と大桑層に記録されている変動パターンの変化とは密接な関係があると推論される。
- 日本古生物学会の論文
- 1991-06-28