日本人正常成人のFrank誘導ベクトル心電図の性差,年令差の分析
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概要
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日本人健康成人男子1092名,女子478名の総計1570名を対象としてFrank法VCGの各種測定項目について,年齢の対応する男女群間で平均値および分散の差の検定をおこない,性差の有無を調べた.更に年代区分した男子4群および女子3群の2群間で同様の検定をおこない年令差の有無についても検討した.A)性差1)各投影面の最大QRSおよびTベクトルの大きさ,X,YおよびZ誘導のQ,R,SおよびTの各波高の女性の平均値は,同年代の男性に比しすべて小さく,そのほとんどが統計学的な有意差を示した.2)女性のQRS環は男性より前下方へ,T環は後上方へ向かう傾向がみられた.特に水平面および左矢状面の最大下ベクトルの方向とQRS-T夾角には著明な性差が存在し,女性のT環は各年代とも男性より20°以上も後方へ向かい,女性のQRS-T夾角の平均値は前額面を除き男性より25°〜40°も小さかった.3)44測定項目中,4項目(Qx/(Qx+Rx),Qy/(Qy+Ry),Qy時間およびTx/Rx)を除き,40項目(90.9%)に統計学的に有意な性差が存在し,さらに年令の対応する3組の男女群問の差がすべて有意であったものは28項目もあり,そのほとんどがQRS環およびT環の大きさに関する項目であった.4)以上の成績はほとんどのVCG項目において,男女別々の正常基準が必要なことを示し,さらに男女別の病態診断基準の必要性を強く示唆しているものと思われる.B)年令差1)前額面最大QRSベクトルの方向は男女とも加令に伴ない水平位をとる傾向がみられた.2)空間QRS環の主要成分のうち,Rxの大きさは男女いずれも加令による減少傾向を示さなかったが,Ryの大きさは両性とも加令に伴ない減少する傾向がみられた.3)3投影面最大QRSベクトルの大きさは男性では加令とともに一様に減少する傾向がみられ,減少の程度はY成分を含む前額面,左矢状面に著しく,水平面では比較的軽度であった.これに対し女性ではこのような傾向を示したのは左矢状面のみであって,減少の程度は男性よりも軽度であり,QRS環の加令変化にも性差の存在を認めた.4)本邦人は欧米人に比し空間QRS環およびT環の加令変化が小さいことを示唆する成磧が得られた.5)従来,心電図の分野では境界年令として40才をとっている報告が多いが,著者らの成績では男女とも40才をとるよりも30才を境界年令とすべき項目の方が多く,十分に考慮すべき問題と考えられる.
- 1973-08-20
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