心室内変行伝導の成立機構に関する実験的研究
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概要
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心室内変行伝導の性質機構を検討する目的で,摘出犬心から作製した一対の右脚系および左脚系標本を用いて,以下の4つの伝導経路に沿ってプルキンエ線維の膜活動電位持続時間(APD)と機能的不応期(FRP)を計測し,これらを各伝導経路間で比較検討した。すなわち,(1)右脚,(2)左脚前枝,(3)左脚後枝および(4)左脚中隔枝の4伝導経路についてである。18例の実験において,左脚前枝と後枝の間の左室中隔面に分布するプルキンエ線維網(=左脚中隔枝)のAPDとFRPは,右脚,左脚前枝および後枝で得られた値よりも有意な短縮(約20~40msec)を示した。さらに,左脚本幹に早期刺激を与えた時,その刺激による興奮が不応期の長い左脚前枝および後枝を伝導できない場合でも,左脚中隔枝を介して伝播し左室心室筋を興奮させうることを実験的に確かめた。このことから,右脚および左脚の心室内伝導系に早期興奮が進入した場合,この左脚中隔枝が唯一の伝導路として有効に機能して左室を興奮させることが可能であると考えられる。従って,左脚系では右脚系よりも機能的脚ブロックが起こり難く,上室性早期収縮による心室内変行伝導が生ずる時には右脚ブロック型のQRS波形になり易いことがよく説明される。
- 社団法人日本循環器学会の論文
- 1978-05-20