東北日本弧東北部の中部更新統に関する研究の現状と課題
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概要
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下北半島田名部低地帯に分布する更新統田名部層とその80㎞南に位置する青森県上北地域に分布する更新統野辺地層は、ほぼ同時期の堆積物とみなされる。それぞれの層序区分と対比、形成年代については最近に至るまで議論が続いている。両層は構造的には前弧海盆の堆積物であり、火山前線に隣接した弧内堆積盆の堆積物でもある。田名部低地帯から上北地域にまたがる第四紀堆積盆を田名部-上北弧内堆積盆と命名する。火山灰層序をもちいた段丘面の編年により、田名部層と野辺地層は中期更新世の堆積物と限定できるようになった。したがって両層の堆積は氷河性海水準変動の影響を強く受けている。 田名部-上北弧内堆積盆についての更新統について検討した結果、次のような堆積相の特徴が抽出できた。すなわち当該堆積盆は最も陸側よりの前弧海盆域に位置しているために海退期に形成された開析谷がよくみられ、それらは引き続く海進期の浅海堆積物で埋積され、一部に高海水準期の堆積物が発達する。海進を受けた開析谷には沼沢地堆積相が出現し、海進の継続によってバリアー島で仕切られたラグーン環境やエスチュアリー環境が広く出現した。両地域ともに堆積の後期にはサンドウェーブのみられる海峡状の地形が存在した。 田名部層と野辺地層にみられる岩相の不連続性は開析谷の重複する侵食構造と潮汐干潟環境によるもので、後者は堆積相の著しい側方変化をももたらす。したがってこのような堆積物中では、allocyclic侵食面とautocyclic侵食面を識別することなしには岩相層序区分はできない。田名部層と野辺地層の層序を確立し、堆積システムを明らかにすることにより田名部-上北弧内堆積盆の堆積テクトニクスが考察できる。
- 弘前大学の論文