健康な若い女性におけるアーモンド摂食が血清脂質に及ぼす影響
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概要
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米国で実施されてきた数多くの研究成果によって、アーモンド摂食が血清中のHDL-コレステロール濃度に影響を与えないままLDL-コレステロール濃度を下げるという効果が証明されている。本研究は、日本人においてもこのような効果が期待できるのかを検証するために実施した。但し本実験では、日本におけるナッツの食習慣を十分に反映するよう十分に考慮して実験条件を設定した。つまり、米国で実施された研究とは、次の4項目について実験条件が異なる。(1)米国では1日の投与量を60〜100gとしているが、本実験では、現実的な摂食量である20gを投与した、(2)米国での実験では生のアーモンドを用いているが、本実験では、加熱調理後に味付けした市販の製品を用いた、(3)日本ではアーモンドをスナックとして常食に上乗せする形で摂食するため、アーモンドによる摂取カロリーを常食から差し引かなかった、(4)心理的な影響も含めて結果を検討するために盲検を入れなかった。結果として、米国での研究結果と同様に、HDL-コレステロールに影響しないままLDL-コレステロール濃度を低減させる効果が確認された。さらに興味深い結果として、正常値の範囲内でも低めのHDL-コレステロール濃度を示す場合、やや濃度を引き上げる効果が示唆された。これが事実であれば、アーモンドの血清コレステロールに対する緩衝効果とも言うべき作用であり、正常値の範囲内にあっても、高めや低めのコレステロール濃度を理想的なレベルに制御しようとする効果があることになる。この緩衝作用については、HDL/LDL比についても同様の効果が示唆された。一方、血清中の中性脂肪濃度がアーモンド摂食によって急激に増加した。この増加は、アーモンド摂食による中性脂肪摂取量の増加によるものと推測されるが、明確な原因は明らかではない。米国の研究では1日の摂取カロリーを標準量に調整してはいるものの、脂質摂取量は標準摂取量を上回っており、そこでの結果では、アーモンド摂食が血清中の中性脂肪濃度に影響を与えていない。今回の研究において血清中性脂肪が急増した原因は、アーモンドの調理方法や、日本人の脂質代謝形態の問題、もしくは食習慣の違いが脂質代謝に影響を与えたことなどが考え得る。
- 2004-03-29
著者
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甲斐 達男
Department of Nutritional Sciences, Faculty of Health and Welfare, Seinan Jo Gakuin University
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元木 清久
Motoki Clinic
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竜口 和恵
Department of Nutritional Sciences, Faculty of Health and Welfare, Seinan Jo Gakuin University
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甲斐 達男
西南女学院大学保健福祉学部栄養学科
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