聴覚障害幼児の言語発達の実態と聴力・教育開始期・教育方法との関係
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概要
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本論文は,就学前聴覚障害児の言語発達の実態を明らかにし,聴力レベル(90dB未満・90dB以上),教育開始期(2歳未満・2歳代・3歳以降),教育方法(キュー併用法・口話法)の3要因が言語発達にどう関与しているかを検討する目的で,6聾学校幼稚部の5歳児58名に,4種の言語課題を実施した結果をもとに論考した。(1)聴力レベルは聴き取りテストの成績にのみ関与していた。(2)教育開始年齢の差は絵画語い検査・言語表現テストの成績に多少とも関与しており,2歳以前の最も早い教育開始が最も良い成績をあげていた。教育開始3歳以降群は聴力が良い(平均78dB)のに,成績は最も悪い傾向にあった。(3)教育方法の差は3要因の中で最も大きく言語発達に関与し,語い検査・言語表現テスト・理解力テストにおいて一貫してキュー併用法の成績が優れていた。聞き取りテストのみ教育方法の差がなかった。(4)総合すると全対象児は,言語発達の異なる実態を示す6タイプに分類できた。言語発達の最も高い水準にあるタイプHは全員キュー併用群であり,最も低い2つのタイプには口話法群がより多いという片寄りが見出された。聴力の程度にかかわらず早期からキュードスピーチを併用した言語指導が効果的であることが示唆された。This paper reports the effects of hearing-level(under 90dB,or above 90dB),starting-age of education(before 2-years-old,during 2-years-old,or after 3-years-old),and method of education(aural-oral method,or cued-speech method)on the language development of hearing-impaired children at the preschool classes for the Deaf.The results were as follows.(1)The difference of hearing-level related only to Listening task.(2)As for the starting-age of education,the earlist group was better than other two groups in the scores of Picture Vocabulary Test and Comprehension Test.(3)Method of education was most effective of these facters;cued-speech-group was superior to aural-oral group in the results of Picture Vocaburaly Test,Expression Task,and Comprehension Task.Only in Listening Task it made no difference between cued-speech method and aural-oral method.(4)Six stages(types)of language development were categorized based on the total results.The children at the highest stage were all from cued-speech-method group,while the children from aural-oral-method group were more at the lowest two stages.
- 大阪教育大学の論文
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