『庭訓徃來註』からみた室町時代の古辞書の語注記 : 『下學集』『運歩色葉集』『節用集』
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概要
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前回,室町時代の古辞書における標記語および語注記内容について発表者の意図とするところを報告した。今回,これらの注記語の検証における継続,そしてその後の結果についてまず報告しておきたい。そのなかで,古辞書の系統を単に古辞書だけでとらえるのではなく,時代における途切れのない継承という過程を常に意識して,当代における「往来物」そしてその「真字注」や「私記」といった語の注釈書に介在しながらも,古辞書そのものが編纂成立している点に着目してみた。ここで多くの往来研究者による『庭訓徃來註』の諸本やその成立状況について,日増しに明らかになってきた昨今の研究状況を見据えて見たとき,これを古辞書研究という国語学の立場からもアプローチする必要性が生じてきていることを実感した。このことで,より緊密な時代空間における言語の共有意識が現代人の眼でもより明らかに見えてくるに違いないと判断する。関連する標記語とその語注記を例証にして,古辞書である『下學集』が『庭訓徃來』〔至徳三(1386)年,最古写本〕などの語を標記語とし,この語注記が次の『庭訓徃來註』〔大永五(1525)年頃成立〕にいわば「古註」として継承されていること,『下學集』に未収載の別なる語注記を『運歩色葉集』〔天文十六(1547)年成立〕や連関の高い,広本『節用集』〔文明六(1475)年成立〕や印度本系統の『節用集』類である弘治二(1556)年本『節用集』・永禄二(1559)年本『節用集』などまでが各々の編纂目標に向かって継承し続ける語注記の流れをここに考察して明かにしてみることが今回の発表のねらいであった。その結果,I『庭訓徃來註』が古註として『下學集』より引用継承した語を一覧検証。II「楊弓」「目出」の語が広本『節用集』に引用されていること。III印度本系統の『節用集』類に「弦」「瓜」「鵜」の語注記に「庭」「庭註」と典拠表示があることをもって検証提示してみた。ここで得た資料全体の整理はまだ不十分ながら,発表者の研究意図や研究過程およびその姿勢は,前回同様に情報言語学研究室のホームページ上で日々更新して公開中である。
- 2001-03-31
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