災害時の外国人にも伝えるべき情報と伝わりやすい日本語表現の構造試論
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概要
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1995年1月の阪神・淡路大震災以来,私たちは被災した外国人や外国人対応機関からの聞き取りを行ってきた。一連の研究から明らかになったことは,(1)多言語での情報提供より,彼らにも理解できる程度の日本語で情報を伝える方が現実的ということであった。そしてまた,一人でも多くの外国人を情報弱者という立場から救うためには,(2)身の安全と当座の生活確保のための緊急性の高い情報をいかに厳選し,(3)いかにわかりやすい表現で伝えるかということであった。このような言語的対策の研究成果として,私たちは1999年3月に『災害時に使う外国人のための日本語案文-ラジオや掲示物などに使うやさしい日本語表現-』と『災害が起こったときに外国人を助けるためのマニュアル(弘前版)』を作成し,初・中級程度のやさしい日本語表現を使っての情報提供が有益であるとの提案を行った。やさしい日本語表現を用いて,外国人被験者(日本語能力が初級から中級程度)へ聴解実験を行ったところ,通常の文では約30%であった理解率が,やさしい日本語の文では90%以上になるなど,理解率は著しく向上した。発表では,72時間情報の意味(もっとも混乱した時間帯での情報とは何か),伝えるべき情報の種類と発信時間(災害発生時に外国人にも伝えるべき情報,緊急性の高い情報の種類と発信時間),やさしい日本語の構文(わかりやすく伝えるための構文の提案),使用できる語彙(買い物やバスの利用ができる程度の日本語語彙の選定と言い替えの方法),音声情報の読み方(ポーズの効用やスピード),使用すべき文字種(漢字仮名交じり文かローマ字文か),シンボルマークの使用(雑多な掲示物の中で外国人の目をひくための表現方法),コミュニティ版(弘前市を実例としたマニュアルの構成と内容)といったことについての試論を報告した。
- 日本語学会の論文
- 2001-03-31
日本語学会 | 論文
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