仁田義雄・村木新次郎・柴谷方良・矢澤真人著, 日本語の文法1文の骨格, 2000年9月27日発行, 岩波書店刊, A5判, 250ページ, 本体価格3400円
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概要
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日本語学が,伝統的な国語学とは異なった分野として市民権を得たのは,それほど古いことではない。名称について言えば,仁田(1980)が刊行された頃には,既にこの領域を日本語学と称していたように記憶するが,それが完全に定着するのは,明治書院の専門誌『日本語学』が発刊された1982年のことである。書評子は,かつて,ある学会誌に掲載された拙論の冒頭で上のように書いたことがある。しかし,その日本語学も20年の研究を経て,新たに発掘された知見の蓄積もかなりの量となり,今後の発展を模索しつつ一応の安定期に入ったように思う。知見を共有財産とすることを目的とした概説書刊行の増加がそれを物語っている。全4巻からなる本シリーズも,共有財産化を目指すものと言えよう。が,このシリーズを概説書の枠だけに収めたくないという編者の意図は,掲載された個々の論考に,各著者の独自の考えが大幅に盛り込まれていることからもそれと分かる。本書は,「文の命題部分の中核から始まり,さまざまな文法カテゴリが加わり,文の意味内容に話し手が顔を覗かせ,ついには文章・談話ができ上がる」(本書「はしがき」)という順に配列されたシリーズの第1巻であり,文の中核部分を扱うものである。4人の執筆者の論考は,「単語」「格|「ヴォイス」「副詞」の順で掲載されているが,書評子の興味もあり,以下,順不同に紹介と論評を行うことにしたい。
- 2002-07-01