「離脱」から「転換」へ : 話題転換機能を獲得した「それより」について
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概要
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本稿では,一文中で「出発点」や「比較基準」を表す「より」が話題転換の機能を獲得した意味拡張の論理的プロセスについて考察した。比較構文「XよりY(がP)」は,程度スケールPや適切さにおいて相対的にYが上位であることを示すと同時にXを否定的に捉える意味合いを内在する。このことは「それより」を承ける述部Pをもたない二文関係を表す「X。それよりY」では,「相対的に下位のXを排除して上位のYを提示する」という話し手の言語行為を表す。「それより」はこのような意味拡張のプロセスを経て,前話題を話の主路線から排除する話題転換機能を獲得した。なお,本稿では,話し手の価値意識によって基準となる事態Xが言及対象から排除されることをXからの「離脱」と定義した。「それより」の話題転換機能は「離脱」が基本をなすため場当たり的であり,論理構築には不向きなものと言える。
- 2002-07-01