開き翼とそれの實用上の價値に就て
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概要
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開き翼とは第1圖に示した如くに翼の後端を開閉する仕掛のある一種の變形翼のことである。この翼の特徴は開きを開くに從ひ益々揚力が大になり其の最大揚力の値は從來の種々の變形翼の内ハンドレー・ベーヂのスロツト翼に次ぐ大さに達するものである。本文には一つの開き翼の模型に就ての風洞試驗の結果を掲げ開きの開閉に伴ふ翼の性質の變化を示してある。開き翼の實用上の價値に就ては此の翼が開き零なるときの小なる抗力と開き大なるときの大なる揚力とを兼備する故に飛行機の速度比を大いに増大することが出來るのである。本文には開き翼を用ふれば飛行機の速度比を約3割増加せしめ得る事を述べてある。此の3割の増加は離着陸速度を3割減ずる爲めにも亦は最大速度を3割増す爲めにも利用出來るものである。尚ほ速度比を大ならしむる見地より開き翼と他の變形翼とを比較するときは開き翼が從來の何の變形翼よりも有利であることを知ることが出來る。ハンドレー・ベージのスロツト翼は揚力の大なる點に於ては開き翼に優つて居るが其の高揚力を與へる迎角が實用の範圍を越ゑて居る爲めに速度比を大ならしむる事に於ては開き翼に及ばないのである。
- 社団法人日本機械学会の論文
- 1930-03-18